大滝しおんの晴筆雨筆

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宅配便約款の責任限度額(30万円)の規定が荷受人にも適用される事例(最判平成10年4月30日 集民 第188号385頁)

今日は、宅配便約款に関する消費者法の判例です。民法判例百選にも載っているので知っている方も多いと思います。

宅配便約款では、荷物の紛失や毀損の責任限度額が30万円に設定されています。この知識を前提に判例の事例を確認しましょう。

A会社は貴金属の加工、販売を営む会社です。A会社は顧客から預かった約400万円のダイヤモンドの加工をB工房に依頼しました。

B工房は加工を終えた商品をA会社に送付しました。その際、一般の宅配便を利用することについて、A会社も容認していました。

そのため、B工房は、品名欄と価格欄を空欄にしたうえで、宅配便で発送しました。

ところが、荷物が途中で紛失してしまったために、A会社は、顧客に賠償したうえで、宅配業者に対して約400万円の賠償を求めました。

A会社の請求は認められるのでしょうか?

 

運送契約は、運送人(宅配業者)と荷送人(B工房)の間で結ばれたもので、荷受人(A会社)や荷物所有者(A会社の顧客)は契約外の第三者になります。

そのため、宅配便約款の30万円という責任限度額の規定も、荷受人(A会社)や荷物所有者(A会社の顧客)には適用されないのではないかという疑問が生じます。

 

ただ、最高裁は、「荷受人も、少なくとも宅配便によって荷物が運送されることを容認していたなどの事情が存するときは、信義則上、責任限度額を超えて運送人に対して損害の賠償を求めることは許されない」と判断しました(最判平成10年4月30日 集民 第188号385頁)。

 

今ではオンライン取引が活発になり、宅配便を使う機会が増えていると思いますが、こうしたトラブルに巻き込まれた際は参考にしてください。

 

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民法449条の適用を否定した事例(大分地判平成3年6月27日)

今日は、「未成年者が法定代理人の同意を得ていないことを知りながら、未成年者が購入した商品の支払債務につき連帯保証人となった者の責任」についての判例です。

未成年者が高額商品を購入し、その支払債務が立替払となる場合は、連帯保証人を立てることがあります。

その売買契約時に未成年者が法定代理人(親権者)の同意を得ていない場合は、契約の取消しが可能となりますが、契約を取り消した場合、その連帯保証人の保証債務はどうなるでしょうか?

保証債務の付従性により消滅するように思われるかもしれませんが、民法には次の規定があります。

 

民法

(取り消すことができる債務の保証)

第四百四十九条 行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。

 

つまり、未成年取消しが可能と知りながら、連帯保証人となった人は、未成年取消しされたとしても、保証債務を履行しなければならないのが原則であるということです。

 

この規定を踏まえて判例の事例を見ていきましょう。

 

平成3年の判例です。

当時19歳だったAさんはBさんのスナックでアルバイトをしていました。

そして、スナックの客から116万円の着物の購入を勧誘されたために、信販会社との間で月約4万円で36回払いの立替払契約を締結しました。

なお、契約時にAさんは親権者の同意を得ていませんでしたが、Bさんが連帯保証人となりました。

その後、Aさんが未成年取消ししたという事例です。

 

裁判所は、民法5条の処分を許した財産は、月約4万円の賦払い金ではなく、代金総額の116万円で判断すべきとして、本件では処分を許した財産とは言えないので未成年取消しができると判示しました。

 

民法

(未成年者の法律行為)

第五条 

3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

 

そして、Bさんの連帯保証債務については、制限行為能力者の連帯保証人が損害担保の意思を一般的に有すると解するのは疑問があるとして、連帯保証人であるBさんが独立の債務を負担することを否定しました(大分地判平成3年6月27日)。

 

民法449条は、推定規定ですから、このような結論を得ることも可能ということですね。

未成年者の保証債務関係のトラブルを抱えた場合は参考にしてください。

 

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未成年者取消権と未成年者の詐術(茨木簡判昭和60年12月20日)

今日のテーマは未成年者取消権と未成年者の詐術です。

未成年者が親権者などの法定代理人の同意を得ないで契約したとしても原則として取り消すことができます(民法5条)。しかし、未成年者が成人していることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない事になっています(民法21条)。

 

この知識を前提に今回の事例を見てみましょう。昭和60年の判例です(茨木簡判昭和60年12月20日)。

当時18歳で働いていた未成年者がキャッチセールスによって、エステ美容の化粧品を代金約16万円で購入し、月に1万4千円で12回払いとする立替払契約を結びました。

そして、契約書の生年月日欄には20歳に達していると偽るために嘘の生年月日を記載したという事例です。

 

嘘の生年月日を記入することで、成人したと偽っていた場合は、詐術に当たるため、未成年取消しができなくなります。

ただ、この事例では、販売業者の従業員の指示により書かされたものであると認定されたので、詐術に当たらないと判断されました。

 

また、業者側からは、月々の支払額が1万4千円なので、民法5条3項の「処分を許した財産」に当たるから、未成年取消しの対象にならないとの主張もなされたようです。

 

民法

(未成年者の法律行為)

第五条

3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

 

ただ、この点についても、裁判所は、処分を許した財産とは、「代金の総額で判断すべき」としました。

この事例では、代金の総額は約16万円なので、とても処分を許した財産と判断することはできないとされました。

よって、未成年取消しが可能だった事例です。

 

未成年取消しの主張を検討する際は参考にしてください。

 

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大学院の入学契約を動機の錯誤を理由に取り消した事例(名古屋地判平成19年3月23日)

今日の判例は、大学院の入学契約を動機の錯誤を理由に取り消した事例です。

錯誤取消を主張するためには、

  • 重要性(法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである)
  • 因果関係(錯誤に陥らなければ意思表示しなかったであろうという関係)
  • 錯誤に陥った人が重大な過失に陥っていないこと

の3つを満たす必要があります。

また、動機の錯誤は、錯誤の内容が表示されていることも必要です。

以上の知識を前提に判例の事例を確認しましょう。

 

Aさんは社会人として働きながら大学院で医学系の研究を行い博士課程を修了したいと考えました。大学院側とのやり取りにより、それが可能と考えて、入学手続きを行いました。

しかし、実際には、働きながら大学院を修了することは難しかったという事例です。

Aさんにとって、働きながら博士課程を修了できることが、入学を決める際の重要な要素であり、それが難しければ、入学しなかったと言えることから、重要性と因果関係を満たしています。そして、これは動機の錯誤に当たるわけですが、大学院側とのやり取りでその動機が表示されていました。

なお、大学院側は口頭試験で「最低1年間は研究に集中することが必要である」と述べたので錯誤に当たらないと主張していましたが、メールのやりとりなどでは、「自由度は大きい」「最初の1、2年は集中した期間来るのが理想だが4年かけて通いながらじっくり学ぶというのも研究室では前例が無いがあっても良いと考える」などの楽観的な説明を行っていたようです。

裁判所は、Aさんには、いささか慎重さを欠いた部分があったことは否定できないものの重大なる過失があったとまで認められないとして、動機の錯誤として認めたようです。

 

ちなみに、この事例は、国公立大学の事例でした。

大学院側からは国公立大学における入学許可は行政処分なので民法95条は適用されないとの主張もなされましたが、裁判所は、国公立大学と学生との法律関係は、公法上の無名契約(在学契約) であるとして、民法95条が適用されると解しました。

 

以上が、名古屋地判平成19年3月23日の事例です。

この判例は最高裁サイトでも検索できるので興味がある方は参考にしてください。

 

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ブルーベリーの収穫が順調です

7月に入ってから、毎週のようにブルーベリーの収穫をしています。

最初の収穫日(7月2日)

まだ熟していないのがほとんどですから、数えるほどだけでした。

 

2回目(7月9日)

熟している実が増えたので、収穫量が増えました。

 

3回目(7月19日)

このころから、収穫できる実が急増しました。収穫にザルを持参。

 

4回目(7月23日)

収穫の全盛期! ミニトマトも一緒に。


ブルーベリーの収穫は、まだまだ続きそうです。
鳥に食べられる前にどんどん収穫します。

収穫したブルーベリーはつまみ食いした後、すべて冷凍します。
冷凍するとアイスのようになるので、夏場には最適です。
夏が終わっても残っている分は、ブルーベリージャムを作る予定です。

というわけで、ブルーベリーの収穫の記録でした。

 

探偵の別れさせ工作はどこまでが合法なのか?(大阪地判平成30年8月29日)

本命の人が他の人と交際している場合にその交際を終わらせるために、探偵事務所に「別れさせ工作」を依頼するケースもあるようです。

では、探偵の別れさせ工作は、公序良俗に反しないのでしょうか?

 

もしも、公序良俗に反するとしたら、別れさせ工作委託契約は無効になるため、依頼者は代金を支払う義務がないことになります。

 

裁判所は、「別れさせ工作委託契約」が公序良俗に反するのは次のような方法による場合であると判示しました。

 

  • 人倫に反し関係者らの人格、尊厳を傷つける方法
  • 関係者の意思に反してでも接触を図るような方法
  • 関係者らの自由な意思決定の範囲で行うとは言えない方法

 

ちなみに、裁判の事例では、次のような工作方法を用いたようです。

 

  • 工作員女性を対象男性に近づける。
  • 対象男性が工作員女性と浮気をしている事実を指定女性(依頼者の本命の女性)に知らせる。
  • 浮気されたと知った指定女性が対象男性との交際を終わらせる。

 

なお、関係者全員が未婚であることを確認した。

また、工作員女性には、肉体関係を持つことで目的を達成することを禁止し、実際に対象男性と食事をする程度のものにとどめていた。

 

このようなケースだったため、裁判所は、「別れさせ工作委託契約」が公序良俗に反するとまでは言えないと判断しました(大阪地判平成30年8月29日)。

 

この判例は最高裁サイトでも検索できるので興味がある方は参考にしてください。

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自動車の盗難事故における立証責任(最判平成19年4月17日 民集 第61巻3号1026頁)

今日のテーマは、自動車の盗難事故における立証責任です。

自分の自動車が第三者に盗まれてしまった場合は、自動車保険(車両保険)の保険金を請求することができます。

そのためには、自動車が盗難被害に遭ったことを保険会社に対して主張立証しなければなりません。

 

ところが、本当に盗難被害に遭ったのか疑われてしまうケースもあります。

例えば、自動車の所有者(被保険者)が第三者に依頼して、自分の自動車を盗ませたうえで、盗まれたと称して保険金を詐取するケースも考えられるためです。

そのため、自動車の盗難被害が被保険者の意思に基づかないものであることも主張立証しなければならないのではないかという点が問題になります。

 

最高裁は、次のように述べています。

 

  • 被保険自動車の盗難という保険事故が発生したとして車両保険金の支払を請求する者は、「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実を主張、立証すれば足りる。
  • 被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張、立証すべき責任を負わない。
  • 被保険自動車の盗難という保険事故が保険契約者、被保険者等の意思に基づいて発生したことは、保険者において免責事由として主張、立証すべき事項である(最判 平成19年4月17日 民集 第61巻3号1026頁)。

 

そして、外形的事実とは、

  • 被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと
  • 被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと

の2つから構成されるとのことです(最判平成19年4月23日 集民 第224号171頁)。

 

つまり、自動車の盗難を理由に保険金を請求する際は、自動車が盗まれたという事実だけ主張立証すればよいということです。

盗んだ人と所有者(被保険者)の共謀による自作自演ではないかということは、保険会社側が免責事由として主張、立証することになります。

 

自動車の盗難事故で保険金を請求する際は参考にしてください。

 

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