大滝しおんの晴筆雨筆

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法学部で学ぶ憲法とは? 国家資格試験や公務員試験での重要度も解説

憲法は法学部に入ったら、必ず勉強する科目です。

高校までの社会科の授業でも憲法の前文や9条問題については触れていることが多いと思いますので、入学したての学生にとってはもっとも身近な法律と言えるかもしれません。

では、法学部で学ぶ憲法は役立つのか、重要なのかについて見ていきます。

以下に、憲法の重要度について、五段階で評価してみました。

 

日常生活でのお役立ち度

★☆☆☆☆

実務での重要度

★☆☆☆☆

国家試験での重要度

★★★★☆

講義の楽しさ

★★★☆☆

 

憲法の日常生活でのお役立ち度

日常生活でのお役立ち度というのは、憲法を知っていると日常生活で役立つかという指標です。

憲法の指標は星一つです。

はっきり言って日常生活で、憲法を知っていて役立つことはありません。

憲法は、理念を示した法律に過ぎず、国民の具体的な権利義務は、国会が制定する法律により決められているからです。

 

例えば、憲法第25条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定められています。

では、最低限の生活も営めない貧困状態にある方は、この規定を根拠に、国や自治体に、生活を保障するよう求めることができるのでしょうか?

この点については、プログラム規定説とか法的権利説などの様々な学説がありますが、最高裁は次のように述べています。

 

この規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。

具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によつて、はじめて与えられているというべきである。(最大判昭和42年5月24日  民集 第21巻5号1043頁)

 

つまり、憲法の規定は、宣言文に過ぎず、具体的な権利は国会が制定した法律によって初めて定まるということです。

そのため、貧困状態にある方が、国や自治体に生活保障を求めたいなら、憲法を振りかざしても意味はなく、生活保護法を根拠とすべきということになります。

憲法の条文のすべてが、宣言文に過ぎないというわけではありませんが、この最高裁判決は、憲法の性質をよく示していると言えます。

そういうわけで、憲法を勉強しても、日常生活で役立つことは殆どありません。

 

憲法の実務での重要度

実務での重要度とは、法曹や公務員、隣接法律専門職、企業法務などに関わる方が、憲法を知っていると仕事で役立つかという指標です。

憲法の指標は星一つです。

実務でも、憲法を知っていて役に立つことは殆どありません。

実務で憲法が出てくるのは、行政庁が下した処分に不服がある場合に、行政事件訴訟を提起して、その際についでに処分の根拠となった法律が憲法に違反している(違憲)と主張する場面が考えられます。

つまり、「そもそも法律がおかしいんだ」といった主張をしたい時以外は役に立つことはないということです。

 

憲法の国家試験での重要度

日常生活でも実務でも役に立たない憲法ですが、国家試験対策としてはかなり重要です。

司法試験、公務員試験、行政書士試験、司法書士試験など、多くの国家試験で、憲法が出題科目になっています。

ただ、いずれの試験でも、憲法は最重要科目ではありません。

司法試験では、民法、刑法の方が出題数が多いですし、行政書士試験、司法書士試験でも、他の科目と比べると出題数は少なく、マイナー科目に位置づけられています。

公務員試験でも、憲法以外に教養科目などたくさんの科目を勉強しなければなりません。

そのため、星を一つ減らしています。

 

憲法の国家試験対策は、判例を覚えることに尽きます。

まずは、判例百選に掲載されている200件ほどの基本的な判例を押さえたうえで、判例付き六法に掲載されている判例を虱潰しに覚えるとよいでしょう。

ただ、憲法が得意だと有利になる国家試験はないので、程々にして、民法などの重要科目に力を注ぎましょう。

 

憲法の講義の楽しさ

憲法の講義が楽しいかどうかは、担当教員次第なので、あくまでも一般論になります。

憲法は、大きく、総則(総論)、人権、統治の3つに分かれています。

 

総則(総論)では、憲法とは何か? について学びます。

担当教員によってどこまで詳しくやるかは違うと思いますが、この分野を鈍足で講義する教員だと、フランス人権宣言などの近代史の講義になってしまいます。

「法学部に入ったのになんで歴史の講義を聞かないといかんの?」

という疑問を抱いてしまうかもしれません。

つまらない人にとってはこのあたりで憲法はつまらないと思ってしまうかもしれません。

 

人権に入ると、ようやく法律の講義らしくなります。

いろいろな判例も出てくるので、法学部の講義らしくなってきます。

上記で紹介した憲法25条の判例も朝日訴訟という有名な判例なので、人権の講義で触れることになります。

このあたりは憲法の講義で一番面白い分野になります。

 

統治は、三権分立について学ぶ分野になります。

国会、内閣、裁判所がそれぞれどのような権限を有しているのかについて、憲法の条文のほか、国会法、内閣法、裁判所法といった法律や判例をもとに見ていく分野です。

国の仕組みについて学ぶ分野なので、人権と比べると、地味ですし、面白くないかもしれません。

 

このように、憲法は、出だしはつまらない。中盤に入ると面白くなり、後半は、また、つまらなくなるという山を登り降りするような科目ということができます。

担当教員の講義がつまらなくて、ぼうっとなったり、眠くなるなら、その時間を利用して基本的な判例を覚えてしまいましょう。

憲法の判例を覚えれば、国家試験では必ず役に立ちます。

 

まとめ

憲法は、日常生活や実務で役に立つことはありませんが、国家試験では試験科目になっていることが多いことから、法学部に入ったなら、しっかり勉強したい科目です。

担当教員の講義がつまらない場合でも、サボるのではなく、その時間を利用して判例を覚えてしまいましょう。