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法学部で学ぶ民法とは? 国家資格試験や公務員試験での重要度も解説

法学部で学ぶ民法は、私たちの日常生活に深くかかわっている上、実務でも国家試験でも非常に重要な法律です。

法学部に入ったら、民法はしっかり勉強しておきましょう。将来必ず役に立ちます。

この記事では、民法とはどのような法律なのか紹介します。

民法とは?

民法は法学部で必ず勉強する科目です。

民法は「私法の一般法」とも呼ばれており、個人と個人の関係を定めている法律です。

普段、意識することは殆ど無いかもしれませんが、私達の日常生活は民法が規定する契約関係で成り立っています。

例えば、私達がお店で買物をする時は、売買契約という契約関係を結んでいます。

では、売買契約とはどのような契約なのか、買主と売主にはそれぞれどのような権利義務があるのかといったことが、民法に規定されています。

また、人間関係に関する規定も民法の範囲です。

例えば、好きな人ができて結婚したいと思った場合は、市区町村役場に婚姻届を出すことで、婚姻関係を成立させます。婚姻届を出さず同棲を続ける場合は、内縁関係と言われる関係になります。

では、婚姻関係と内縁関係はどう違うのか? といったことも民法に規定されています。

 

このように民法は、わたしたちの日常生活に深く関わる法律なので、法学部ではしっかりと勉強したい科目です。

以下に、民法の重要度について、五段階で評価してみました。

 

日常生活でのお役立ち度

★★★★★

実務での重要度

★★★★★

国家試験での重要度

★★★★★

講義の楽しさ

★★★★★

 

民法の日常生活でのお役立ち度

日常生活でのお役立ち度というのは、民法を知っていると日常生活で役立つかという指標です。

民法の指標は星五つです。

すでに述べたとおり、私達の日常生活は民法が規定する契約関係で成り立っています。

お店で買物をするときの売買契約が代表例ですが、他にもたくさんあります。

例えば、このブログを見ている皆さんは、プロバイダーなどと通信回線の契約を結んでいるはずです。

遠くに出かける時は、電車や飛行機に乗ると思いますが、これも運送契約を結ぶからこそ乗せてもらえるわけです。

このように日常生活では意識しなくても様々な契約関係を結んでいるわけです。

では、その契約関係でトラブルになったら、法律的にどう解決したら良いのか? ということの基本的な考え方は、民法に規定されています。

 

例えば、金銭感覚が身についていない未成年の子どもが高額な商品を勝手に買ったとしたらどうでしょうか?

今では、子どもでもスマホやパソコンでネットショッピングをする子も少なくありませんから、値段とかを考えないで買ってしまうかもしれません。

知らぬ間に家に高額商品が届いて、高額な請求がなされるという事態もありうるわけです。

このような場合、民法の規定を知っていれば、うろたえずに冷静に対処することができます。

民法では、未成年者が契約などをする際は、法定代理人つまり、親の同意を得なければならないと定められています。そして、親の同意無しで未成年者が契約した場合は、取り消すことができることになっています(民法5条)。

そのため、未成年の子どもが勝手に高額商品を購入しても、親が「未成年取り消し」を主張すれば原則としてどんな契約でも取り消しが可能です。

 

こうしたことを知っていれば、必要ない高額商品の代金を支払ってしまって、大損するといった事態を避けることができます。

 

民法の実務での重要度

実務での重要度とは、民法を知っていれば、弁護士などの法曹関係者や行政書士などの隣接法律専門職、企業の法務担当者などが仕事で役に立つかという指標です。

民法の指標は星五つです。

すでに述べた通り私達の日常生活はもちろん、企業間の取引でも契約関係が基本です。

 

契約には様々な類型がありますが、民法では「典型契約」と呼ばれる契約を規定しています。

典型契約とは、次の13種類の契約のことです。

 

  1. 贈与契約:財産を人に無償で与える契約。子どもにお年玉をあげる関係が代表例(民法549条)。
  2. 売買契約:商品の売り買いをする契約。日常的な買い物はもちろん、不動産や自動車の売買契約も含む(民法555条)。
  3. 交換契約:金銭以外の物々交換の契約のこと(民法586条)。
  4. 消費貸借契約:代表的なのは金銭消費貸借契約と言い、金融機関からお金を借りる契約(民法587条)。
  5. 使用貸借契約:無償で物を貸す契約のこと。例えば、親友や親戚に自分の家の一室を貸す関係や自分の自動車などをタダで貸す関係(民法593条)。
  6. 賃貸借契約:代表的なのはアパートなどの賃貸借契約。つまり、大家さん(貸主)と借主の契約関係のこと(民法601条)。
  7. 雇用契約:代表的なのは「メイドとご主人様」の契約関係。その他の労働契約は労働法による(民法623条)。
  8. 請負契約:代表的なのは大工さんに家を建ててもらう契約関係(民法632条)。
  9. 委任契約:代表的なのは弁護士や行政書士等の士業に仕事を依頼する契約関係(民法643条)。
  10. 寄託契約:倉庫に荷物を預ける契約のこと(民法657条)。
  11. 組合契約:複数人で共同出資して何かを始める契約関係のこと。会社に似ているがちょっと違う(民法667条)。
  12. 終身定期金契約:個人年金保険のような契約のこと(民法689条)。
  13. 和解契約:いわゆる示談のこと(民法695条)。

 

民法が制定された明治時代に、ひとまず、規定されたのがこの13種類の典型契約です。

ただ、現在では、典型契約以外にも様々な類型の契約があります。

例えば、フリーランスが結ぶことの多い「業務委託契約」は、典型契約のいずれにもピッタリ当てはまらず、売買契約、請負契約、委任契約の性質を併せ持つ契約とされています。

このように民法の規定する契約関係の枠に収まりきらない契約を「非典型契約」と言います。

 

現在では、世の中の契約の多くが、非典型契約です。

とはいえ、非典型契約のベースとなっているのは典型契約です。つまり、典型契約の応用版として非典型契約が存在していると言うことができます。

そのため、典型契約を民法でしっかりと勉強しておくことが、実務の大前提になるわけです。

 

民法の国家試験での重要度

国家試験での重要度とは、司法試験や公務員試験などの試験における民法の重要度の指標です。

民法の指標は星五つです。

民法が出題される試験はたくさんあります。

司法試験、行政書士試験、司法書士試験、宅地建物取引士試験、公務員試験では、民法が独立した科目で出題されますし、ビジネス実務法務検定試験など民間の資格試験でも民法の知識が必要です。

しかも、いずれの国家試験でも民法の出題数が多いです。

そのため、民法が得意なら得点を稼げるので試験でも有利ですし、逆に苦手だと合格は難しくなります。

法学部に入ったら、他の法律科目は手を抜いても構いませんが、民法だけはしっかり勉強しておきましょう。

 

民法の講義の楽しさ

講義の楽しさとは、法学部の民法の講義が楽しいかどうかの指標です。

講義が楽しいかどうかは、担当教員次第ですが、一般的には、民法の講義は法学部の様々な講義の中でも最も楽しい講義になるはずです。

 

法学部の民法は、民法という一つのまとまった科目として講義が行われることは殆どありません。

多くの場合は、

  • 民法総則
  • 物権法
  • 担保物権法
  • 債権総論
  • 債権各論
  • 不法行為法
  • 親族法・相続法

という個別の科目として講義が行われることになると思います。

それぞれどのようなことを学ぶのか大まかに説明します。

 

民法総則

民法総則は、民法が定める契約関係に入るに当たっての前提条件について学ぶ科目です。

例えば、未成年者はどんな契約でも基本的に取り消すことができますよ。といった話を学びます。

 

物権法

物権法は、人と物の関係。例えば、所有権について学ぶ科目です。

どのような場合に所有権を取得するのか。所有権を取得した人は、どのような権利があるのかといった話です。

また、所有権以外にも、占有権、地上権、地役権といった物権もあるのでこれらの物権がどのような権利なのか学びます。

派生科目として、借地借家法や不動産登記法に触れることがあります。

 

担保物権法

担保物権法は、担保、つまり、抵当権について学ぶ科目です。

住宅ローンを組んで土地や家を購入した場合は、金融機関が抵当権を設定するのが一般的ですが、この抵当権はどのような担保なのか、ローンを返済できなければどうなるのかといったことを学びます。

担保には抵当権以外にも、質権、根抵当権、譲渡担保などもあるので、それぞれの違いも学びます。

派生科目として、民事執行法などの担保権の実行方法にも触れることがあります。

 

債権総論

債権総論は契約の全体像について触れる科目です。

契約関係を結んだ場合は、お互いの「権利と義務」が決められます。

例えば、売買契約では、買主には「商品の引き渡しを受ける権利」と「代金を支払う義務」が生じます。一方、売主には「代金を受け取る権利」と「商品を引き渡す義務」が生じます。双方のこの「権利と義務」のことを「債権と債務」と表現します。

一般用語では、「債権と債務」と言うと「取り立てと借金」といった意味合いがありますが、債権総論では意味が異なるので、混乱しないようにしてください。

そして、契約当事者が債務を履行しなかった場合は、「債務不履行」となるわけですが、この場合、どのように解決したら良いのかといったことを学びます。

単純に商品を引き渡さなかった場合だけでなく、引き渡したものの商品に欠陥(瑕疵)があった場合は、「契約不適合」ということになりますが、では、どうすべきか? という話も含みます。

民法の中で一番難解な科目とも言われており、苦手な人はつまずきやすいですが、この科目を乗り越えれば、民法をマスターしたも同然です。

 

債権各論

債権各論は、先に説明した13の典型契約がそれぞれどのような契約なのか学ぶ科目になります。

 

不法行為法

不法行為法は、日常生活で突然、他人に危害を加えられた場合にどのように損害賠償請求すべきかについて学ぶ科目です。

条文自体は少ないですが、日常生活で起こり得る事故、例えば、安全配慮義務違反、交通事故、医療過誤など、様々な事故について判例を題材にしながら、損害賠償請求が可能なのか学んでいきます。

民法の中で一番法律科目らしい学問なので、多くの人が面白いと感じるはずです。

 

親族法・相続法

親族法・相続法は家族法とも呼ばれることがありますが、家族の関係について学ぶ科目です。

親族法は、親族の範囲、婚姻と離婚、養子縁組、子の認知等について学びます。

相続法は、遺産を相続できるのは誰なのか、それぞれの相続分はどうなるのか、遺言が残されていた場合はどうすべきか、遺産分割で揉めた場合の対処法などについて学びます。

 

このように民法は学ぶ範囲が広いです。

条文も全部で1050条もあるので、これを全部覚えなければならないの!? と驚いてしまうかもしれませんが、法学部で勉強するだけでしたら、条文は暗記する必要はありません。期末試験でも六法は持ち込み可能なことがほとんどです。

また、民法は、どの科目でも事例や判例を基に講義が行われることが多いので、具体的なイメージが湧きやすいと思います。

単純に条文を追いかけるだけの講義になることは少ないので、面白いと感じることが多いでしょう。

 

まとめ

法学部でしっかり勉強したかどうかは、民法をどれだけ知っているかで判断できると言っても過言ではありません。

民法の知識があれば、どんな仕事でも必ず役立つので、これから法学部に入る方は、民法だけはしっかり勉強してください。