大滝しおんの晴筆雨筆

大滝しおんの公式ブログです。本人が運営しています。晴筆雨筆とありますが毎日は無理なので、まったりと記事を書いていきます。(注意:このブログではGoogleから広告が自動で挿入されます。)

小説の書き方:テーマはなぜ重要なのか?

小説(一般文芸とライトノベルも含みます)を書くときは、テーマを決めることが大切と言われます。

なぜテーマが重要なのでしょうか? テーマの有無によって、小説にどう影響してくるのか? 私なりの考え方をまとめておきたいと思います。

小説で描くのは登場人物の一部分

小説の登場人物全員の行動を事細かに記述していたら、何を書きたいのかよくわからない小説になります。

例えば、主人公が人間であれば、朝起きてから、夜寝るまで様々なことをしますし、寝てからも、いろいろな夢を見るでしょう。

その一つ一つを羅列していたら、小説ではなく、ただの観察記録とか、日記といった類のものになります。

 

主人公の一日のうちの一部分を切り取って描くのが小説です。

他の登場人物もその点は同じです。仲間はもちろん、ライバル役の人間もそうです。

主人公の視点で描く場合、主人公以外の人物の動きは、更に限定されたものになります。

例えば、学校が舞台の小説なら、主人公が朝起きて、家で家族と食事をするシーンがあるかもしれません。

でも、仲間が家族と朝食を取るシーンは基本的に出てきません。主人公が登校した後で接触するシーンでしか出てこないので、動きが限定的になります。

ライバル役が他の学校の生徒だとすると、主人公の日常には登場せず、特別なシーンにしか出てこないことになります。

 

更に学校での生活でも、授業、休み時間、部活など様々なシーンがありますが、一時間目の授業から順番に描いていたら、やはり、日記になってしまうので、描くべきシーンはテーマに合わせて絞ります。

例えば、部活をメインのテーマに据えるなら、授業やクラスのシーンは基本的にカットするか、地の文で流す程度に留めます。

その代わり、部活での練習の場面を深く描くことになるわけです。

 

このように小説で描けるシーンは限定されていることから、何を描きたいのか、テーマを決めておかないと描くべきシーンも定まらないことになります。

逆にテーマを決めたら、テーマに関係ない部分は、切り捨てることが大切です。

 

ライバル、敵、黒幕の動きを深く描くことに拘らない

ライバル、敵、黒幕の動きを描くべきかどうかは、小説執筆時の大きな問題の一つです。彼らを描く時は、視点を切り替えなければならず、物語の流れを切ってしまうからです。

主人公の活躍をメインに描くなら、基本的に物語は主人公の視点のみで描きます。主人公の仲間も、主人公の目に留まる範囲でしか描きません。

そうなると、ライバル、敵、黒幕の動きは主人公の目に触れることがほとんどなく、事件解決や対決のシーンなどにしか出てきません。

 

でも、ライバル、敵、黒幕側の事情も描かないと深みのある小説にならないと思う方もいらっしゃるかもしれません。

でもそれはテーマが駆け引きとか、戦争もの、政治ものの場合に限られます。

テーマが駆け引き等ではないのに、ライバル、敵、黒幕側の事情を描いていたら、頻繁に画面が切り替わるだけの読みにくい小説になってしまいます。

 

「登場人物は深く描かなければならない。だから、ライバル、敵、黒幕側の事情も描くべきだ」という点に拘りすぎると、テーマがブレてしまうこともあるので注意したいものです。

 

テーマを決めることで登場人物の立ち位置が決まる

テーマを決めることで登場人物の設定も絞られてきます。

例えば、運動系の部活をテーマにするなら、主人公のクラスでの席はどこになるでしょう?

授業中は寝ているか、授業の内容が頭に入ってなくて、部活のことしか考えていないかもしれません。

そのような主人公の席は、教師の目に止まりにくい後ろの席でしょう。最前列で真面目に授業を受けていることは想定しづらくなります。

一方、勉強をテーマにする場合は、主人公が真面目に授業を受けていなければ話になりません。当然、クラスの席も前の方になるはずです。

このように学校が舞台でもテーマが違うだけで主人公の席も変わるわけです。

 

まず、一番描きたいシーンを決める

では、小説のテーマはどのようにして決めたら良いのでしょうか。

まず第一に考えるべきことは、「一番描きたいシーンは何か?」ということです。

例えば、部活で「ライバルに勝ったシーン」を描きたいと考えたとしましょう。

それなら、「ライバルに勝ったシーン」を際立たせるにはどのようなストーリーにしたらよいかを考えます。

最初から強い主人公が「ライバルに勝ったシーン」を描いても読後の高揚感は得られないことは分かると思います。

やはり、最初は弱い主人公が仲間に助けられながら強くなって、強いライバルを撃破してこそ、「ライバルに勝ったシーン」が際立つはずです。

すると、テーマも自ずと決まってきます。

「諦めない心」

「頑張ることの大切さ」

「仲間を信じること」

「仲間と協力すること」

こうしたテーマが浮かび上がるでしょう。

テーマが決まれば、描くべき物語も絞られてきます。

師匠との出会いによって強くなったり、仲間とすれ違いながらも団結したり、といったシーンでしょう。

ライバルが最初から強い設定であれば、ライバル側の視点の物語は描く必要はありません。ライバルがどのようにして強くなったかの物語は、地の文で流すだけでよいわけです。

もちろん、テーマに関係ないその他のストーリーは思い切ってカットすることになります。

 

まとめ

小説では描ける範囲が限られていることからブレ防止のためにもテーマを決めることが大切です。

 

テーマを決めるためにはまず、一番描きたいシーンを決めます。

次にそのシーンを際立たせるためのストーリーを考えます。

これが決まれば、テーマも自ずと浮かび上がりますし、描くべきストーリーの輪郭もはっきりしてきます。

以上が、私の考え方です。

ぜひ、参考にしてください。