司法試験に挑戦しても合格しなければ、履歴書は空白のままです。
法科大学院(ロースクール)は学歴としては微妙ですし、司法浪人であれば、無職だったのと同じになってしまいます。
この記事では、司法試験に五振して不合格になってしまった方、万が一、不合格になった場合に備えたい方におすすめの資格を紹介します。
履歴書に空白を作ってしまったあなたへ
司法試験は難易度が大変高く、優秀な人でも合格できるかどうかは分かりません。
司法試験に合格しなければ、どれだけ法律の勉強をしても、何の実績も残せなかったことになります。
司法試験に専念するいわゆる司法浪人状態だった場合は、その期間は、履歴書の上では空白になってしまいます。
履歴書の空白を目にすると、司法浪人の期間がとてつもなく無意味なものに見えて、むなしくなってしまうのではないでしょうか?
その空白を無意味なものにしないためにも、その空白期間にやってきたことを何らかの形として残したいと思う方もいるでしょう。
短答式に合格したことは資格としての意味はない
司法試験や予備試験の短答式に合格したことは、一応の記録にはなりますが、資格ではないので履歴書に書けるものではありません。
採用担当者に基礎的な法律知識があるとアピールできる程度のものに過ぎません。
しかも、採用担当者によって反応には差があり、こんな質問をされることもあるかもしれません。
「司法試験って、短答式試験と論文式試験の二つに合格すればいいんだよね?」
「はい。そうです」
「短答式に合格したんだよね。だったら、もう少し頑張って、論文に合格すれば? 論文って模範解答を書けばいいだけでしょ?」
「……はあ?」
そもそも、司法試験の内容を知らない人にとっては、短答式試験と論文式試験の違いや難易度の差も分からないので、このような話になってしまうことも珍しくありません。
短答式に合格したことは、司法試験の内容を知っている人以外には何のアピールにもならない可能性があるということです。
司法試験以外の資格を狙おう
司法試験に合格していない以上、司法試験の勉強をしたことやその成績は、履歴書に書けるものではありません。
司法試験の勉強しかしてこなかった場合は、合格できなければ、資格欄すら空白になってしまいます。
あまりにむなしいですよね。
そうならないようにするためには、司法試験以外の資格試験も少しずつ挑戦して、せめて、資格欄だけは空白にならないようにしたいものです。
ここでは、司法試験の勉強と並行して、あるいは、司法試験撤退後に狙える資格を紹介しておきます。
ビジネス実務法務検定試験
ビジネス実務法務検定試験は、東京商工会議所が主催する民間の資格試験です。
民法や会社法などの知識をビジネス実務においてどのように活用するのかという観点から試験内容が構成されています。
司法試験予備試験の短答式を突破できるレベルであれば、新たに勉強すべきことはほとんどありません。
公式テキスト・問題集を基に独学で勉強すれば、合格できるでしょう。
ビジネス実務法務検定試験は1級から3級までありますが、司法試験の受験生なら1級も合格できます。
ビジネス実務で、何が重要なのかが見えてくるので、司法試験の勉強と並行して挑戦することをお勧めします。
一般企業の法務の仕事をしたいなら、「司法試験の勉強をしていました」とアピールするよりも、「ビジネス実務法務検定試験1級に合格しています」とアピールした方が効果的です。
行政書士
行政書士は営業許認可などの官公署に提出する書類やその他の権利義務関係の書類作成等を担う国家資格者です。外国人労働者の受け入れが急務の今では、出入国管理法関係の業務が人気ですし、その他の営業許認可の分野でも一定のニーズがあります。また、遺言や相続問題のニーズも増えています。
司法試験を狙っている方なら、行政書士試験を意識したことはあるでしょう。
行政書士試験は、司法試験と試験科目がかなり被っています。
行政書士試験の試験科目である憲法、民法、商法・会社法あたりは、司法試験の勉強をしていた方であれば新たに勉強すべきことはありません。
ただ、行政法だけは、細かく勉強しなおす必要があります。
また、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令など、行政書士試験特有の内容も出題されるので、テキストや過去問で一通りの勉強は必要です。
試験慣れするためにも、できれば、司法試験の勉強をしている間に挑戦しましょう。
合格できれば、一定のレベルに達していることの証になりますし、前向きに司法試験に挑戦できるでしょう。
宅建士(宅地建物取引士)
宅地建物取引業者(いわゆる不動産会社)は、従業員5人に1人以上の割合で宅地建物取引士の設置が義務付けられています。そのため、不動産会社を中心に宅地建物取引士のニーズはそれなりにあります。
宅建試験の試験科目は、大きく次の4種類に分けられます。
- 権利関係(民法、借地借家法、区分所有法、不動産登記法等)
- 宅建業法(宅地建物取引業法)
- 法令上の制限(都市計画法、建築基準法等)
- その他関連知識(不動産に関わる税金等)
司法試験の勉強をしていたなら、権利関係のメインである民法は、新たに勉強する必要はありません。
ただ、借地借家法、区分所有法、不動産登記法等、細かい法律もあるのでテキストや過去問で一通りの勉強は必要です。
それ以外の宅建業法、法令上の制限、その他関連知識は、司法試験と被らないので、新たに勉強しなければなりません。
宅建の合格率は、例年16%前後、合格ラインは50点満点中36点前後です。
宅建の試験問題は全部で50問ですが権利関係はそのうち、14問しか出ません。宅建業法や法令上の制限をしっかり勉強しなければ、司法試験の勉強をしている人でも合格できません。
その意味で、合格率は高めでも、油断はできない試験です。
司法書士
司法書士は、不動産登記や商業登記の専門家です。法務局に提出する書類の作成の他、家庭裁判所から成年後見人に選任されることもありますし、司法書士特別研修を受けることで、簡裁訴訟代理等関係業務を行うこともできます。
弁護士と大差ない活動を行うことができるので、司法試験をあきらめた方が、次に狙う資格として紹介されることもあります。
法科大学院(ロースクール)に行かなくても、誰でも受験できるので敷居が低い資格と思われがちです。
しかし……。
司法書士試験の難易度は、司法試験と大差がありません。
司法書士試験の試験科目は、司法試験とかなり被りますが、不動産登記法、商業登記法という独特の科目を深く勉強しなければなりませんし、書式試験という形で実際に登記申請書作成を行う問題も出されます。
そのため、司法試験の片手間に勉強するには、負担が大きすぎます。
司法試験をあきらめて、司法書士試験に転向する場合でも、もう一度、司法試験を受けるのと大差ない勉強が必要になることは覚悟しましょう。
司法試験敗戦後に精神的に疲弊している方にはお勧めできません。
まとめ
司法試験に合格できなければ、司法試験の勉強をしていたことや司法浪人期間は、履歴書上空白にしかなりません。
せめて、資格欄を充実させたい場合は、司法試験の勉強が生かせる資格を狙いましょう。
ビジネス実務法務検定試験や行政書士は、司法試験予備試験短答式に合格できるレベルの方であれば、それほど労力をかけずに合格できます。
宅建士は意外に新たに勉強すべき科目が多いですが、コストパフォーマンスが高い資格です。
更に頑張れば、司法書士を取ることで、弁護士に準じる活動もできるようになります。
司法試験に挑戦した証を残したい方は、ぜひ、これらの資格に挑戦してみてください。