大滝しおんの晴筆雨筆

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法学部で学ぶ会社法・商法とは? 法学部出身なら知らないと内定が取れない?

会社法・商法は、株式会社の組織のあり方や企業間取引(商取引)のルールを定めた法律です。会社員であれば誰しも関わる法律です。

企業の採用担当者が法学部出身者を採用する際は、会社法・商法の知識に期待していることがあります。その期待を裏切らないためにも、法学部に入ったら、しっかりと勉強しておきたい科目です。

会社法・商法とは?

会社法・商法は、法学部で必ず勉強する科目の一つです。

商法というと、商売の方法を学ぶのかと勘違いする方もいるかもしれませんが、商法という法律が存在しています。

 

取引における契約のルールは、民法が原則になります。

ただ、BtoB(Business to Business)つまり、企業間取引(商取引)では、民法とは異なるルールが適用されることがあります。

ではどのような点が民法と異なるのかということを商法で学びます。

 

商法の第一条にも次のように定められています。

 

商法

(趣旨等)

第一条 商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。

2 商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)の定めるところによる。

 

つまり、

  • 商取引では、商法のルールが第一に適用される。
  • 商法にルールがない場合は、商慣習が適用される。
  • 商慣習にもルールがない場合は、民法が適用される。

ということです。

商法のルールは、商法という法律の「商法総則・商行為法」で学びます。

 

それともう一つ重要なのが、商法とは別の法律である「会社法」です。むしろ、こちらの方がメインに勉強することになります。

会社法とは、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社がそれぞれどのような組織の会社なのかについて定めた法律です。

 

会社の組織は会社によって違うし、それぞれの会社が自由に決められるものと思っている方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、営業部、経理部、法務部といった会社の営業に関わる組織は、会社ごとに自由に決められますし、会社によって様々でしょう。

でも、どの株式会社でもトップには取締役がいますし、株主と呼ばれる立場の人達もいます。

会社法では、取締役や株主がどのような役割を果たしているのかについて学びます。

また、会社を成立するための手続き、会社のM&A(合併買収)を行うための手続きについても学んでいきます。

さらに、会社というと、株式会社が代表例ですし、会社法でもメインで勉強しますが、合同会社、合名会社、合資会社といった形態の会社は、株式会社とどう違うのかも学びます。

今では新規に設立できない有限会社という会社についても触れます。

 

それから、もう一つ、手形小切手法という法律もありました。ただ、2026年度末までに「紙」の手形や小切手が廃止されることになっているため、今後は勉強しなくなるかもしれません。

現在では、手形小切手に代わり、電子記録債権法という法律に基づく、電子記録債権(でんさい)が導入されています。今後は、こちらの方を勉強することになると思います。

 

このように会社法・商法は、会社のルールを定めた法律であることから、現代の社会で重要な役割を果たしています。

では、会社法・商法の重要度について、5段階で評価してみましょう。

 

日常生活でのお役立ち度

★★☆☆☆

実務での重要度

★★★★★

国家試験での重要度

★★★★☆

講義の楽しさ

★★☆☆☆

 

会社法・商法の日常生活でのお役立ち度

会社法・商法の知識が、日常生活で役に立つのかという指標です。

会社法・商法のお役立ち度は、星2つです。

私たちが日常生活を営む限りにおいては、会社法・商法の知識が役立つ場面は殆どありません。

 

ただ、今では政府が「貯蓄から投資へ」と個人投資を推進しています。

株式に投資するには、株式がどういうものなのか、投資する会社がどのような組織なのかといったことを知っていなければなりません。

そうしたことを理解するためには、会社法の知識が役立ちます。

また、ニュースなどでは、株式取得、株式買収といったM&Aの用語が飛び交っています。株式投資をするなら、こうした動向も知っておくべきですが、これらの用語を読み解くためにも、会社法の知識が役立ちます。

 

このように株式投資を検討している方や、経済ニュースを理解するためには、会社法の知識が欠かせません。

 

会社法・商法の実務での重要度

会社法・商法の知識が弁護士などの法曹関係者や行政書士などの隣接法律専門職、企業の法務担当者などが仕事で役に立つかという指標です。

会社法・商法の指標は星5つです。

 

会社の設立や会社のM&Aは、会社法で定められたルールに則って行われるため、その基本ルールである会社法を熟知していなければ、そもそも仕事になりません。

また、株主総会の開催時も株主にどのようなことを通知したら良いのか、株主総会はどのように運用したら良いのかということも会社法にルールが設けられています。会社で株主総会の開催に関わる業務を担当するなら、やはり、会社法の知識が必要です。

一般の会社員でも法学部出身なら、「会社法知ってるよね。株主総会の運営を任せるから」とか「手形・小切手法を知ってるよね。手形の扱いを任せるわ」と言われることもあります。

このように、企業法務に関わる弁護士や行政書士などはもちろん、一般の会社員でも必須の知識です。

 

会社法・商法の国家試験での重要度

司法試験や公務員試験などの試験における会社法・商法の重要度の指標です。

会社法・商法の指標は星4つです。

会社法・商法が出題科目となっている資格試験は、司法試験のほか、司法書士試験、行政書士試験が挙げられます。

民法に比べると出題科目数が少ないため、重要度は一つ落ちますが、それでも、会社法・商法を理解していなければ、どの資格試験も合格は難しいです。

また、国家試験ではありませんが、ビジネス法務の知識を問うビジネス実務法務検定試験でも、会社法・商法の知識が問われます。

 

会社法・商法の講義の楽しさ

では、会社法・商法の法学部での講義は楽しいのでしょうか?

楽しいかどうかは、担当教員によりますし、又、学生さんの好みにもよるでしょう。

将来、自分で会社を作って、会社を大きくしてやるといった野望に燃えている若手起業家志望者なら、興味深い分野かもしれません。

 

個人的な感想になりますが、会社法・商法は、はっきり言って面白くありません。

 

特に会社法は、条文をひたすら覚えるだけです。

例えば、株主総会の決議方法として、

  • 普通決議
  • 特別決議
  • 特殊決議

の3種類があります。

それぞれの決議の定足数と議決権の原則的な数字や例外的な数字を覚えなければなりません。

例えば、次のような表で暗記していくわけです。

 

決議の種類

定足数

議決権

普通決議

議決権を行使することができる株主の議決権の過半数

出席した株主の議決権の過半数

特別決議

議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を下限に定款で加重、軽減可能)

出席した当該株主の議決権の三分の二以上(定款でこれを上回る割合を定めることも可能)

特殊決議1(会社法309条3項)

なし

議決権を行使することができる株主の半数以上かつ当該株主の議決権の三分の二以上(定款でこれを上回る割合を定めることも可能)

特殊決議2(会社法309条4項)

なし

総株主の半数以上かつ総株主の議決権の四分の三以上(定款でこれを上回る割合を定めることも可能)

 

次に普通決議で決議できるのはどのような決議事項かといったことを覚えなければなりません。こちらは、特別決議と特殊決議を押さえて、それ以外は、普通決議になるという考え方でも大丈夫です。

ただ、株主総会で決議できることと取締役会で決議できることは異なっていて、試験問題では、両者の決議事項がミックスされる形で出されることもあるため、やはり、普通決議で決議できる内容も正確に覚えなければなりません。

 

このように細かい数字や内容をひたすら覚えるだけなので、試験対策として勉強すると、本当につまらない科目です。

 

もちろん、会社法・商法の分野でも判例があります。

法学部でサラッと学ぶ程度であれば、判例を中心に講義する教員もいるでしょう。そのような講義なら、割と面白いかもしれません。

 

まとめ

会社法・商法は、日常生活では株式投資や経済ニュースを理解するために役立ちます。

実務では必須の知識ですし、試験対策でも重要なので、法学部でしっかり勉強したい科目です。

一般の会社員でも、「法学部出身なら会社法を勉強しているはず」という前提で、仕事を任されてしまうことがあるので、入社してから困らないように最低限のことは理解しておきましょう。