大滝しおんの晴筆雨筆

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信玄公旗掛松事件(大審院判大正8年3月3日)

シジョセンと学ぶ民法判例集は、紫雲女子大学消費者センターの相談記録(シジョセン)の登場人物たちの会話劇で民法の主要な判例をおさらいするシリーズです。

今日のテーマは「信玄公旗掛松事件(大審院判大正8年3月3日)」です。

 

登場人物

神前愛佳(部長、消費生活相談員、予備試験合格者、法学部3年)

芽森琴音(カウンセラー、お嬢様、家政学部2年)

白砂菜月(アシスタント、空手女子、体育学部2年)

七緒実乃里(アシスタント、ヒロイン、法学部1年)

村正悠也(顧問弁護士、24歳のイケメン?)

 

登場人物の詳細はこちらでご確認ください。

ootakishion.com

 

琴音「武田信玄ゆかりの松が枯れたから伐採したそうですわ。信玄が旗をかけたという伝説があるそうですの」

ノートパソコンでニュースをチェックしていた琴音がそうつぶやきました。

その言葉に民法の判例の勉強をしていた実乃里がハッとします。

実乃里「えっ? 信玄が旗をかけた松? それって、令和のニュースですか?」

琴音「そうですわ。もっとも、松の寿命は約300年から500年ほどと言われているので、本当かどうかは分かりませんけどね」

実乃里「そうなんですね。実は今、信玄公旗掛松事件の判例を勉強しているところなんです。大正時代にも信玄が旗をかけたという伝説がある松が枯れたという話でした。信玄公旗掛松っていくつあるんでしょうか?」

菜月「そんな話はいくらでも盛れるからな。大正時代の話だって、適当に言い出したんじゃないの?」

愛佳「そうよ。大正時代の信玄公旗掛松事件の松も樹齢を鑑定したところ、真実ではないことが判明しているわ」

実乃里「あっ。そうだったんですね。すると、この事件は嘘の話で、加害者からお金を取ろうとしたんでしょうか?」

愛佳「武田信玄ゆかりの松かどうかはともかく、この事件は、他人が所有する松を蒸気機関車の煤煙で枯らしたことが問題なのよ。どういう事件か分かるわね?」

実乃里「はい。Aさんが所有する松のそばに線路が敷かれたんです。おまけにすぐ近くに停車場が設けられたんです」

菜月「大正時代の蒸気機関車は石炭を燃やして水を沸騰させて、蒸気の力で動かすやつだからな。煤煙と熱い蒸気を出しているから、線路の側に木があると枯れるだろうな」

琴音「おまけに停車場ということは、停車中に、大量の煤煙と熱い蒸気を出し続けるわけですから、なおさら影響を受けやすいですわね。それが原因で枯れてしまったということですの?」

実乃里「そういうことみたいです」

愛佳「じゃあ、この場合、Aさんはどういう理由で鉄道会社を訴えたらいいかしら?」

琴音「当時の鉄道会社は国が運営していましたでしょ? 国を訴えるのはなかなか難しいでしょうね」

愛佳「今なら、国家賠償法があるけど、当時は、権利者は悪をなさず、国は悪をなさずという考え方だったのよ。国を相手に訴訟を起こすのは相当の覚悟が必要だったはずだわ」

実乃里「うーん。するとどういう理由で訴えたらいいんでしょう」

菜月「国には、鉄道を敷いて蒸気機関車を走らせる権利があるんだろうけど、他人の大切な松を枯らしたのは、権利の濫用というところかな?」

実乃里「あっ。そうですよね。これも権利の濫用の判例なんですね」

愛佳「正解よ。そして、権利の濫用によって、他人の大切な松を枯らしたわけだから、不法行為に当たるというのがこの判例のポイントよ。不法行為が成立する場合、加害者は損害賠償責任を負うのよ」

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

実乃里「すると、Aさんは国に賠償金を支払ってもらえたということなんですね?」

愛佳「そうよ。当時としてはかなり踏み込んだ判決だったのよ」

 

 

まとめ

 

信玄公旗掛松事件は、権利の濫用を理由に国の損害賠償責任を認めた判例だった。

 

 

この会話劇に登場する女子大生たちの活躍は、下記のライトノベル小説「紫雲女子大学消費者センターの相談記録 初回500円の甘い罠」でお読みいただけます。

 

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