大滝しおんの晴筆雨筆

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サブリース契約の期間満了による終了と転借人への対抗(最判平成14年3月28日 民集 第56巻3号662頁)

シジョセンと学ぶ民法判例集は、紫雲女子大学消費者センターの相談記録(シジョセン)の登場人物たちの会話劇で民法の主要な判例をおさらいするシリーズです。
今日のテーマは「サブリース契約の期間満了による終了と転借人への対抗」です。


登場人物
神前愛佳(部長、消費生活相談員、予備試験合格者、法学部3年)
芽森琴音(カウンセラー、お嬢様、家政学部2年)
白砂菜月(アシスタント、空手女子、体育学部2年)
七緒実乃里(アシスタント、ヒロイン、法学部1年)
村正悠也(顧問弁護士、24歳のイケメン?)
 
登場人物の詳細はこちらでご確認ください。

 

ootakishion.com

 

判例集を前にした実乃里が頭を抱えていました。

実乃里「うー。さっぱり、分からない……」

琴音「どうしましたの?」

実乃里「あの、琴音先輩、ビルのサブリースってなんですか?」

琴音「ビルのサブリースですわね。例えば、実乃里ちゃんが、駅前の一等地に土地を持っていたとしますわ。そして、ビルを建ててテナントを募集しようと計画したとしますわね。そんな時、実乃里ちゃんならどうしますの?」

実乃里「ビルを建ててテナントを募集するって……、そもそも、どんなビルを建てればいいか分からないですし、テナントの募集方法も分かりません」

琴音「そこで、賃貸ビルの経営ノウハウを持っている不動産会社にビルの建設から賃貸経営までおまかせするんですわ」

菜月「実乃里はビルのオーナーになって、実際の賃貸経営は不動産会社がやるということだな。実乃里は何もしなくても安定収入が得られるってことさ」

琴音「普通の賃貸経営では、空室が出たらお家賃が入りませんけど、サブリースなら空室でも収入が得られるということですわ」

愛佳「民法上は、転貸借という契約関係になるのよ。実乃里ちゃんがビルのオーナーで不動産会社にそのビルを一棟まるごと貸す。そして、不動産会社がテナントにビルの一室を貸すという関係ね」

 

愛佳がホワイトボードに次のように書き出しました。

ビルのオーナー=賃貸人

不動産会社=賃借人(転貸人)

テナント=転借人

賃貸人→賃貸借契約→賃借人(転貸人)→転貸借契約→転借人

 

実乃里「あっ、そういう関係なんですね」

愛佳「そして、その先の話がややこしいのよね」

実乃里「はい。サブリースにおいて、ビルオーナーは信義則上、期間満了による不動産会社との賃貸借契約の終了をテナントに対抗できない、そうですが、どういうことでしょう?」

愛佳「転貸借契約というのは、賃貸借契約が有効に続いていることが前提の契約だわ。賃貸借契約が期間満了によって終了すれば、転貸借契約も自動的に終了せざるを得ないのよ」

 

※なお、転貸借契約を終了させるには、賃貸人から転借人への通知が必要。

借地借家法

(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護)

第三十四条 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。

2 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。

 

実乃里「そうですよね。サブリースもそう考えるべきなのにどうして、そうならないのでしょう?」

琴音「サブリースの場合、不動産会社はビルのオーナーとテナントを仲介しているようなものなんですの」

菜月「テナントから見るとビルのオーナーから借りているのであって、不動産会社から借りている意識はないってことだな」

愛佳「そうね。ビルのオーナーと不動産会社は契約上は賃貸借契約を結んでいるけど、ほぼ一心同体のような関係にあるのね。そして、この判例の事例では不動産会社が撤退したのよ。あとはビルオーナーとテナントが直接やり取りしてくださいってことね」

実乃里「あっ、そういうことなら、賃貸借契約が終わったから、転貸借契約も終わりというのでは、テナントさんが困りますよね」

愛佳「そうでしょ。でも、この場合、どうすべきかは民法にも借地借家法にも書かれていないのね。そこで、信義則を持ち出したのよ。信義則はどこに書かれているか分かるわね」

実乃里「はい。民法1条2項ですね」

 

民法

(基本原則)

第一条

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

 

琴音「信義則って便利な規定ですわね。法律に規定がない時に使えるんですわね」

菜月「困った時の信義則ってとこかな」

 

 

まとめ

 

建物の賃貸借契約が期間満了により終了すれば、原則として転貸借契約も終了する。

しかし、サブリース契約の場合は、賃貸人は転貸借を承諾したにとどまらず、転貸借の締結に加功し、転貸借契約の締結に積極的に関与したと言える。

そのため、賃貸借が期間満了により終了しても、賃貸人は転借人に対抗することはできず、転借人は建物の使用を続けることができる。

 

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