大滝しおんの晴筆雨筆

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ヤフオク!での契約成立時期(横浜地判令和4年6月17日)

行政書士試験、司法書士試験、司法試験に合格した後で弁護士等になって消費者トラブルや内容証明郵便の実務に取り組みたい方に役立つ消費者法の判例を紹介します。

 

今日の判例はヤフオク!で売買契約が成立するのはどの時点かという判例です。

Aさんはヤフオク!で15万円の時計を出品しました。

落札者が現れたものの上位落札者との契約に至らず「補欠を繰り上げる」を選択したまま削除したところ、9万円で落札したBさんが繰り上がりました。

直後に、Bさんがかんたん決済サービスで代金の支払いを終えた場合、Aさんには引き渡し義務が生じるのでしょうか?

 

Aさんからすると操作を誤って繰り上げたのだから、民法95条の錯誤を理由に契約が成立しておらず、引き渡し義務がないと言いたいところでしょう。

でも、裁判所は「補欠を繰り上げる」を選択したまま繰り上げをしたAさんの重過失を認定しました。

AさんはBさんを繰り上げる前にも、「補欠を繰り上げる」を選択して次順位の落札者を繰り上げており、そうすることの意味を知っていたはずだからです。

そして、売買契約は申込と承諾の意思表示が合致したときに成立します(民法555条)。

Aさんによる繰り上げの操作を申込、Bさんによる代金の支払いを承諾と解することができるので、売買契約が成立したことになる。

よって、Aさんには引き渡し義務があるということです(横浜地判令和4年6月17日)。