大滝しおんの晴筆雨筆

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NHK受信契約と放送法64条(最大判平成29年12月6日 民集 第71巻10号1817頁)

行政書士試験、司法書士試験、司法試験に合格した後で弁護士等になって消費者トラブルや内容証明郵便の実務に取り組みたい方に役立つ消費者法の判例を紹介します。

 

今日の判例は「NHK受信契約と放送法64条」の判例です(最大判平成29年12月6日 民集 第71巻10号1817頁)。受験生の方にとっては、憲法、民法の重要判例としてお馴染みなのではないでしょうか。

消費者法の面からは「NHKと受信契約を結んでいない場合でも受信料について5年の消滅時効を援用できるのか?」という点が問題になります。

結論から言うと、テレビを設置したのにNHKと受信契約を結んでいない場合は、受信料について5年の消滅時効を援用することはできません。

 

放送法64条に基づき、テレビを設置した時点でNHKと受信契約を締結する義務が生じます。

NHKはテレビを設置した人に対して、受信契約の「申込み」を行うことができ、テレビを設置した人はこれに「承諾する」義務が生じるわけです。

テレビを設置した人が「承諾」しない場合は、NHKは裁判所に対して、受信契約の申込みに対する「承諾の意思表示を命ずる判決」を求めて提起することができます。

そして、この「判決が確定した時」に、「受信契約が成立」します。

一方、受信料の支払い義務は、「受信設備(テレビ)の設置の月」から発生します。

 

ところで、NHKは受信料の消滅時効が5年であることを明示しています。

最高裁判決では、消滅時効の起算点について、「受信契約成立時」から進行するとの判断を示しました。

 

 

では、この最高裁判決によれば、20年前にテレビを設置して受信契約を締結していなかったら、どうなるでしょうか?

 

NHKが受信契約締結を求めて裁判を提起して、NHKが勝訴したとするとその時点で「受信契約が成立」します。

この受信契約に基づく、受信料の支払い義務はテレビを設置した20年前に生じたことになります。

そして、消滅時効は「受信契約成立時」から進行するわけですから、20年前にテレビを設置して受信契約を締結していなかった人は、テレビを設置した時から受信契約が成立するまでの20年分の受信料について消滅時効を援用することができません。

そのため、20年分の受信料の支払いを命じられてしまうということです。

地上波だけでも約20万円以上、衛星契約とセットだと40万円以上といった金額を請求されてしまう可能性があります。

 

以上、消費者法の判例紹介でした。

NHKと受信料をめぐってトラブルになっているといった相談を受けた際は参考にしてください。