大滝しおんの晴筆雨筆

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法律の文章は何故読みにくいのか?

法律の勉強をする方や法律の実務に関わる方は、法律書、条文、判例集、先例集などを読み込まなければなりません。

法学部の学生や司法試験、行政書士試験、司法書士試験といった資格試験の受験生なら基本書、実務家なら実務書を読むことになると思います。

 

しかし、こうした法律書等は、読みにくい本が多いものです。

  • 基本書を読んでいると眠くなってしまう。
  • 条文を読んでも頭に入らない。
  • 判例を読んでもポイントが理解できない。

といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

 

更に資格試験の勉強をしている方は、

  • 問題文が頭に入らない。

という悩みを抱えているかもしれません。

法律系資格試験の問題文は、基本書や条文と同じトーンで書かれているので、苦手意識を克服しない限り、資格試験合格は難しいものです。

 

 

法律用語が原因ではない

 

法律書等が読みにくい理由として、よく挙げられるのが、「専門用語が多用されている」ということです。

代表例として、善意、悪意という言葉が取り上げられることがありますね。

善意は日常用語では、慈善といった意味合いですが、法律用語では「知らない」という意味です。

悪意も日常的には悪い意図といった意味ですが、法律用語では「知っている」という意味になります。

でも、こうした法律用語は、勉強しているうちに慣れるので、読みにくい理由としては弱いでしょう。

本当に読みにくい文章は、法律用語を理解していても読みにくいものです。

 

 

一つの文章に多数の情報が圧縮されているから

 

法律用語を理解していても読みにくい文章の例は、枚挙に暇がありませんが、判例の文章を一つ紹介しましょう(この文章がダメという意図で挙げているわけではありません)。

 

無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合に、当該物の所有者が、自己と同契約の受託者との間に同契約に基づく債権債務を発生させる趣旨でこれを追認したとしても、その所有者が同契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできない(最判平成23年10月18日 民集 第65巻7号2899頁)。

 

民法の判例百選にも載っている有名な判例です。

初めて読んだ方は、何が書かれているか理解できないと思います。

しかし、こういう文章に慣れないと、資格試験合格は難しいわけですね。

 

この文章が読みにくいのは、一つの文章に多数の情報が圧縮されているからです。

この文章は大きく3つに分類できます。

 

A、無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された

B、当該物の所有者が、自己と同契約の受託者との間に同契約に基づく債権債務を発生させる趣旨でこれを追認した

C、その所有者が同契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできない

 

数学的に言えば、A+B=Cということを述べています。

そして、Aにも条件があって、D✕E=A、さらに、Bにも条件があり、F÷G=Bというようなことが書かれているわけです。

まとめると、「D✕E+F÷G=C」になりますよということをこの一文で述べていることになります。

数学でこうした問題を解く時は、D✕EとF÷Gの答えを個別に出して、控えておいて、最後にこの2つを足して答えを出すという思考をたどると思います。

 

ところが、法律の文章では、こんなふうに丁寧に書き分けられていなくて、一文で一気に情報を出してくるので、集中して読まないと頭に入らないわけですね。

これが、法律の文章が読みにくい原因です。

 

次に、この判例の結論が導かれる理由として次のような解説が続きます。

 

なぜならば、この場合においても、販売委託契約は、無権利者と受託者との間に有効に成立しているのであり、当該物の所有者が同契約を事後的に追認したとしても、同契約に基づく契約当事者の地位が所有者に移転し、同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解する理由はないからである。仮に、上記の追認により、同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解するならば、上記受託者が無権利者に対して有していた抗弁を主張することができなくなるなど、受託者に不測の不利益を与えることになり、相当ではない(最判平成23年10月18日 民集 第65巻7号2899頁)。

 

一読して、「なるほど! そういう理屈なのか!」と理解できた方は大したものです。もちろん、資格試験合格を目指すなら、この一文で、なるほど! とならなければなりませんが、初めて読んだ方は理解できないでしょう。

この文章は2つの文章からなっていますが、やはり、この文章も一つの文章に情報が圧縮されているために読みにくいわけです。

 

 

読みにくい法律の文章を理解するにはどうしたら良いのか?

 

読みにくい法律の文章は、その殆どが一つの文章に情報が圧縮された文章です。

これを解読するにはどうしたら良いのか?

方法は一つ。圧縮された文章を解凍して一つ一つ丁寧に理解していくしかありません。

zipファイルは解凍しなければ閲覧できないのと同じです。解凍しなくても理解できるのは、その内容を知っている人だけですよね。

 

例えば、上記の判例では

Aの部分で、

  • 物の販売委託契約とはどのような契約なのか?
  • 委託者が無権利者の場合でも販売委託契約は有効なのか?

次にBの部分で

  • 販売委託契約の目的物について別に所有者がいる場合はどうなるのか?
  • 所有者が追認した場合の効果は?
  • 所有者の意図は考慮されるのか?

といったことを理解する必要があります。

こうしたことを理解して初めて、判例の結論が納得できるわけです。

 

ただ、圧縮された文章を解凍して理解する時間的余裕があるのは普段の勉強の時だけです。

資格試験では、圧縮された文章のまま理解して答えを出していかないと、時間が足りなくなってしまいます。

そのため、解凍した文章で理解したら、圧縮された文章で覚えるということが、資格試験合格のためには必要です。

 

 

まとめ

 

法律の文章が読みにくいのは、法律用語を使っていることも理由の一つですが、一つの文章に情報が圧縮されているからです。

情報が圧縮された文章は丁寧に解凍して理解するしかありません。

資格試験合格を目指す方は、解凍して理解した後は、圧縮された文章で覚えましょう。

法律用語が読みにくいと感じている方は参考にしてください!

 

 

最後に、私のPRです。

私は、「読みにくい法律の文章を小説化して読みやすくする!」を小説家として活動する際のテーマの一つにしています。

2025年5月に書籍化した「紫雲女子大学消費者センターの相談記録 初回500円の甘い罠」もその意図で書かれています。

 

法律の勉強をしている方にこそ読んでいただきたいと思います。

読みにくい文章は出てこないのでスラスラ読めます。

この小説を読めば、消費者トラブルに対処するための入門知識が身につきます。

息抜きの読書が法律の勉強にもなるのですから一石二鳥ですよ。

 

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