行政書士試験、司法書士試験、司法試験に合格した後で弁護士等になって消費者トラブルや内容証明郵便の実務に取り組みたい方に役立つ消費者法の判例を紹介します。
今日の判例は、無限連鎖講に該当する契約により給付を受けた金銭の返還を求められた際に不法原因給付に当たることを理由に拒むことは信義則上許されないとされた事例です。
まず、無限連鎖講に関する出資や契約は公序良俗に反して無効となります。
そのため、無限連鎖講に該当する取引をやっていた会社から配当金を受け取った人は、その会社から配当金の返還を求められたとしても、不法原因給付に当たるものとして返還を拒むことができます。
民法
(不法原因給付)
第七百八条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
しかし、配当金を受け取った人が不法原因給付を理由に返還を拒否することが信義則上許されないケースもあります。
具体的には、
・無限連鎖講に該当する取引をやっていた会社が破産した場合において、出資した人の大多数が被害の救済を受けられない状況にある。
・一方、少数の人は多額の配当金を得て出資額の数倍の利益を得ていた。
このような状況において、破産会社の破産管財人が、被害者へ配当を行うなど適正かつ公平な清算を図るために、多額の配当金を得た少数の人に対して、利益の相当額について返還を求めた。
このようなケースでは、多額の配当金を得た少数の人は、利益相当額について不法原因給付に当たることを理由に破産管財人への返還を拒むことはできないということです(最判平成26年10月28日 民集 第68巻8号1325頁)。
つまり、無限連鎖講をやっていて配当金によって多額の利益が出たとしても、いずれその会社は破産します。そうなった時は、会社の破産管財人が多額の配当金を得た人に対して、利益相当額の返還を求めてくるでしょう。
このような場合は、利益の返還を拒むことはできないわけですから、結局、無限連鎖講で配当金を得ても意味がないということですね。
以上、消費者法の判例紹介でした。参考にしてください。