大滝しおんの晴筆雨筆

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自動車の盗難事故における立証責任(最判平成19年4月17日 民集 第61巻3号1026頁)

今日のテーマは、自動車の盗難事故における立証責任です。

自分の自動車が第三者に盗まれてしまった場合は、自動車保険(車両保険)の保険金を請求することができます。

そのためには、自動車が盗難被害に遭ったことを保険会社に対して主張立証しなければなりません。

 

ところが、本当に盗難被害に遭ったのか疑われてしまうケースもあります。

例えば、自動車の所有者(被保険者)が第三者に依頼して、自分の自動車を盗ませたうえで、盗まれたと称して保険金を詐取するケースも考えられるためです。

そのため、自動車の盗難被害が被保険者の意思に基づかないものであることも主張立証しなければならないのではないかという点が問題になります。

 

最高裁は、次のように述べています。

 

  • 被保険自動車の盗難という保険事故が発生したとして車両保険金の支払を請求する者は、「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実を主張、立証すれば足りる。
  • 被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張、立証すべき責任を負わない。
  • 被保険自動車の盗難という保険事故が保険契約者、被保険者等の意思に基づいて発生したことは、保険者において免責事由として主張、立証すべき事項である(最判 平成19年4月17日 民集 第61巻3号1026頁)。

 

そして、外形的事実とは、

  • 被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと
  • 被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと

の2つから構成されるとのことです(最判平成19年4月23日 集民 第224号171頁)。

 

つまり、自動車の盗難を理由に保険金を請求する際は、自動車が盗まれたという事実だけ主張立証すればよいということです。

盗んだ人と所有者(被保険者)の共謀による自作自演ではないかということは、保険会社側が免責事由として主張、立証することになります。

 

自動車の盗難事故で保険金を請求する際は参考にしてください。