大滝しおんの晴筆雨筆

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契約の「困った」を解決する切り札!消費者契約法で悪質な勧誘・不当な契約条項を無効にする方法

「契約書にサインしてしまったから……」「クーリング・オフの期間が過ぎたからもうダメだ……」と諦めていませんか?

高額なエステの契約、儲からない投資話、解約時に法外な手数料を請求された。このような「困った」状況から、私たち消費者を守る切り札となる法律が、「消費者契約法(消契法)」です。

特定商取引に関する法律(特定商取引法)によるクーリング・オフと並び、この法律は悪質な事業者に対抗するための強力な武器になります。もしもの時に役立つよう、消費者契約法の基本と具体的な使い方を解説します。

 

契約の「困った」を解決する切り札!消費者契約法とは?

 

私たちの日常生活における契約関係、例えば、お店での買い物や携帯電話の契約などについては、民法という法律が根本的なルールを定めています。

しかし、民法とは別に消費者契約法という法律が存在するのはなぜなのでしょうか?

その理由を解説します。

 

 

消費者契約法が生まれた背景:なぜ特別な法律が必要なのか

 

契約は本来、対等な立場の当事者同士が自由に結ぶのが原則です(民法の「契約自由の原則」)。

しかし、実際の取引では、商品やサービスについて圧倒的な情報量と交渉力を持つ事業者と、そうではない消費者の間には大きな格差があります。

この格差につけ込み、巧みな話術で消費者を騙したり、一方的に不利な契約内容を押し付けたりするケースが後を絶ちません。

消費者契約法は、この「情報・交渉力の格差」を埋め、事業者による不当な行為から消費者の権利を守るために、民法の特別法として生まれました。

 

 

ズバリ、消費者契約法が「守ってくれる」2つのこと

 

消費者契約法(消契法)が私たちを守ってくれる主要な機能は、以下の2つです 。   

 

機能1:クーリング・オフの期間が過ぎても契約の取消しができる

契約締結時の事業者側の説明に問題があったり、消費者を困惑させて契約を締結した場合などに、消費者契約法第4条等に基づいて、契約を取り消すことができます 。   

 

機能2:不当な契約条項を無効とすることができる

事業者と締結した契約条項のうち、消費者にとって著しく不当な条項については、消費者契約法第8条等に基づいて、その条項を無効とすることができます 。   

 

 

悪質な勧誘から契約を白紙に戻す!契約の取り消しが可能なケース

 

事業者の説明や勧誘に問題があった場合、消費者契約法第4条に基づき、私たちは契約の意思表示を取り消すことができます。

クーリング・オフ期間を過ぎていても、この「取り消し」の要件を満たせば契約を白紙に戻せる可能性があるのです。

特に実務でよく問題になる以下の3つのケースを把握しておきましょう。

 

 

「断定的な判断の提供」:将来の不確実なことを絶対、確実だと言われた

 

将来の不確実なこと(例:儲け、病気の回復、商品の価値)について、事業者が「確実である」と断定して説明したために契約した場合、契約を取り消せます。

例えば、

  • 投資セミナーで「この商品は絶対に値上がりします」と断言された。
  • 健康食品の販売で「このサプリを飲めば病気が完治します」と言い切られた。

このように、実際には確実でないにもかかわらず、消費者を誤解させるように断定的な表現を使ったことがポイントです。

 

「不実告知」や「不利益事実の不告知」:嘘や都合の悪いことを隠された

 

契約時の事業者の説明に「不実告知」や「不利益事実の不告知」がある場合は、契約を取り消せます。

 

不実告知(嘘を教えられた)

重要な事柄について「事実と違うこと」を説明された場合です。

例えば、「この商品は最高級の素材を使っています」と説明したのに、実際は安価な素材だった場合です。

 

不利益事実の不告知(都合の悪いことを知らされなかった)

商品の価値や契約の重要事項について、消費者が「誤解している」ことを事業者が知りながら、あえて都合の悪い事実を教えなかった場合です。

例えば、太陽光発電システムの販売で、周辺環境から見て発電量が極端に少ないことを知りながら、その事実を告げなかった場合です。

 

 

「帰ってほしいのに……」困惑による取り消し:居座りや退去の妨害

 

契約を結ぶ意思がないのに、「帰りたい」「もうやめます」と言っても帰らせてもらえなかったり、長時間の拘束を受けたりして困惑した状態で契約した場合も取り消しが認められます。

 

例えば、

  • 自宅に来たセールスマンに「契約するまで帰らない」と言われ、長時間居座られた。
  • 事務所で面談中、退席しようとしたら「話はまだ終わっていない」とドアの前に立ちはだかった。

といったケースです。

 

 

「契約書に書いてあるから仕方ない」は間違い!不当な条項を無効にするルール

 

事業者から渡される契約書や利用規約(約款)には、消費者にとって一方的に不利なルールが紛れ込んでいることがあります。消費者契約法は、このような不当な条項について、たとえ契約書にサインをしていても、その部分を無効にできると定めています。

 

 

不当な「キャンセル料(損害賠償額の予定)」の無効

 

契約を途中で解除したとき、事業者に生じる平均的な損害額を超えるキャンセル料や違約金は無効となります(消費者契約法第9条)。

 

例えば、

  • 英会話教室の途中解約時、残りの回数分の全額を違約金として請求された。
  • ウェブサイトの利用規約に「解約時には商品代金の100%を支払うこと」と記載されていた。

といったケースでは、事業者側が通常被る損害額を超えていれば、その超える部分は無効となり、支払う必要はありません。

 

 

事業者の責任を免除する条項の無効

 

購入した商品に欠陥があった、サービスを利用して怪我をしたなど、事業者の責任で消費者が損害を被ったにもかかわらず、「一切責任を負いません」とする条項は無効です(消費者契約法第8条)。

民法上は、契約で責任を免除すると定めることも可能とされていますが、事業者と消費者の契約については、免責条項を盛り込んでも無効としています。過失による責任まで免除する条項は、消費者の権利を著しく制限するため認められません。

 

 

あなたが今すぐ取るべき行動:消費者契約法の取消権の行使、無効の主張のために

 

事業者と不当な契約を結ばされたあなたが、消費者契約法を「武器」にするためには、具体的な行動が必要です。

 

 

証拠を残すことが命綱!何を記録すべきか

 

「言った」「言わない」のトラブルを避けるためにも、証拠の確保が最も重要です。

 

  • 勧誘時の会話の録音:スマートフォンなどで、悪質な勧誘時の会話を録音しておきましょう。
  • 契約書、パンフレット、広告:全てを保管し、日付をメモしておきましょう。
  • メールやSNSの記録:事業者とのやり取りは全て保存しておきましょう。

 

 

取り消し(無効)の意思表示は「内容証明郵便」で

 

契約の取り消しや、不当な条項の無効を主張する際は、口頭ではなく、書面で意思を伝えるべきです。

特に、内容証明郵便を利用することで、「いつ、どのような内容の通知を相手に送ったか」という証拠が公的に残ります。これはその後の交渉や裁判で非常に有力な証拠となります。

 

 

迷ったら、まずココに相談!公的な相談窓口の活用

 

消費者契約法が使えるかどうかの判断は、法律の専門知識が必要です。迷ったり、証拠集めに不安を感じたりしたら、すぐに公的な相談窓口を利用しましょう。

 

  • 消費者ホットライン「188(いやや!)」:最寄りの消費生活センターにつながります。
  • お住まいの自治体の消費生活センター:無料で相談を受け付けており、問題解決のための助言やあっせんを行ってくれます。

 

消費者契約法は、私たち一人ひとりの消費生活を守るために作られた法律です。悪質なトラブルに遭い、泣き寝入りしそうになったとき、この法律を思い出し、まずは公的な相談窓口に相談しましょう。