クーリング・オフは、消費者に認められた強力な契約解除権ですが、行使できる取引は、「特定商取引」に限られています。
訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引、訪問購入の6種類です。
それぞれの取引がどのような取引なのか、クーリング・オフするに当たっての注意点を解説します。
クーリング・オフとは
クーリング・オフは、特定商取引法(特定商取引に関する法律)により消費者に認められている契約解除権です。
消費者の立場であれば如何なる取引でもクーリング・オフできるわけではなく、「特定商取引」に当たる取引をした場合のみ行使できることになっています。
クーリング・オフできる契約とは?
クーリング・オフできる契約類型は、特定商取引法に規定されています。
次の取引です。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 特定継続的役務提供(エステ・一定の美容医療・語学教室・学習塾・パソコン教室・家庭教師・結婚相手紹介サービス)
- 連鎖販売取引
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
それぞれどのような取引なのか詳しく見ていきましょう。
訪問販売
訪問販売は、セールス担当者が消費者の自宅を訪問して商品を販売するケースが典型的です。ただ、自宅を訪問してくる場合だけが訪問販売に当たるわけではありません。
訪問販売には大きく2つの類型があります。
- 店舗外取引
- 特定顧客取引
店舗外取引とは、販売事業者の営業所や店舗以外の場所で消費者の取引を行った場合を意味します。
消費者の自宅はもちろんですが、喫茶店、ホテル、公民館、路上など、店舗とは言えない場所で取引が行われる場合です。
特定顧客取引とは、販売事業者の営業所や店舗で取引を行った場合でも、消費者の勧誘方法が不意打ち的な場合です。例えば次のような形で消費者の勧誘が行われた場合がこれに当たります。
- キャッチセールス
- アポイントメントセールス
キャッチセールスとは、販売事業者の営業所以外の場所で、消費者を呼び止めて同行する形で勧誘する場合です。路上で呼び止められて店に連れて行かれた場合が代表例です。
アポイントメントセールスとは、SNSやメール、電話などで、「あなたが特別に選ばれました。あなただけに特別価格で販売しますのでぜひご来店ください」という形で、他の人よりも有利な条件で契約できる旨を伝えて消費者を呼び出している場合です。
まとめると、店舗外の取引は原則として訪問販売に当たる。店舗内の取引でも勧誘方法が不意打ち的であれば、訪問販売として扱うというふうに理解していただければと思います。
電話勧誘販売
電話勧誘販売とは、販売事業者が消費者に電話をかけて、商品の販売や契約を迫るケースが代表的です。
電話勧誘販売も2通りのパターンがあり、
- 販売事業者から電話するケース
- 消費者に電話をかけさせるケース
があります。
消費者に電話をかけさせるケースとは、消費者がカタログなどで商品を選んで注文したり、出前を取る場合ではありません。
- 電話をかけるように求める広告を見て電話したら、商品やサービスを勧誘された(商品やサービスを勧誘されると思っていなかった場合)。
- 「あなたが特別に選ばれました。あなただけに特別価格で販売しますのでぜひ電話してください」という勧誘を受けて電話した。
こうしたケースが該当します。
特定継続的役務提供(エステ・一定の美容医療・語学教室・学習塾・パソコン教室・家庭教師・結婚相手紹介サービス)
役務提供とはサービスを受けるという意味です。継続的とは文字通り、継続的にサービスを受けることを意味します。いわゆるサブスクリプションがこれに当たります。
そして、継続的にサービスを受ける取引のうち、特定の取引「エステ・一定の美容医療・語学教室・学習塾・パソコン教室・家庭教師・結婚相手紹介サービス」の場合は、クーリング・オフができるということです。
また、特定の取引がすべて対象となるわけではなく、政令で定められた金額を超える取引で、政令で指定された期間を超えて継続する取引に限られます。
具体的には、
- 政令で定められた金額は、5万円
- 政令で指定された期間は、2ヶ月(エステ・一定の美容医療は1ヶ月)
となっています。
サブスクリプションなら全てクーリング・オフできるわけではないので注意してください。
連鎖販売取引
連鎖販売取引の代表例はマルチ商法です。
連鎖販売取引の厳密な定義は特定商取引法33条に規定されていますが、難解なのでここでの解説は割愛します。
簡単に言えば次のようになります。
商品の販売やサービスを提供している事業者が、販促のために販売組織を作ります。
「他の人を勧誘して入会させると紹介料がもらえますよ」という形で消費者を勧誘するわけです。
消費者が販売組織に入って、他の人を勧誘して入会させれば、紹介料を貰えるわけですが、これを「特定利益」と言います。
ただ、消費者は、販売組織に入るに当たり、自分自身も一定の負担をしなければなりません。商品を自分で購入することもありますし、入会金や保証金の名目でお金を支払うこともあります。こうした負担を「特定負担」と言います。
「特定利益」を目的に「特定負担」をして販売組織に入会する形の取引が、連鎖販売取引に該当します。
実際の連鎖販売取引の形態は、複雑なものが多く、マルチの形態でありながら、連鎖販売取引に該当せず、法規制を逃れているケースもあります。
そのため、消費者が加入した販売組織が連鎖販売取引に当たるのかどうか、クーリング・オフが可能なのかは、事案を吟味しないとはっきりしないケースもあります。
業務提供誘引販売取引
業務提供誘引販売取引の代表例は、内職商法やモニター商法です。
業務提供誘引販売取引の定義は、特定商取引法51条に規定されていますが、やはり難解なので簡潔に解説します。
事業者は消費者に商品やサービスを提供するとともに、消費者にその商品やサービスを利用した儲け話を持ちかけます。
例えば、事業者がパソコンソフトや使い方の講習を消費者に有料で提供します。その際、使い方を習得すれば在宅ワークで儲かりますよと勧誘するわけです。
そして、パソコンソフトを購入したり講習を受けた消費者には、事業者が在宅ワークを提供したり斡旋します。
ところが、当初の説明ほど仕事がなかったり儲からなかった。おまけに、パソコンソフトを購入したり講習にかかった費用が高額すぎる。
このような場合にクーリング・オフできないのかという話になります。
業務提供誘引販売取引のクーリング・オフ期間は20日間と長めですが、騙されたと気づいたときには、その期間がとっくに過ぎていたケースも多いので、儲け話には注意する必要があります。
訪問購入
訪問購入とは、買取業者(購入業者)が、店舗等の営業者以外の場所で、物品の買取を行う取引のことです。
訪問販売の買取バージョンのことだと理解していただければ分かりやすいかと思います。
訪問購入も物品を売った消費者側からクーリング・オフすることができます。つまり、8日以内ならクーリング・オフにより、売った物品を取り戻すことができるということです。
一旦売った物品は、買取業者が転売することが予想されるわけですが、訪問購入で買い取った物を8日以内に転売する場合は消費者への通知が必要ですし、転売相手にもクーリング・オフされる可能性があることを知らせなければならないことになっています。
また、消費者は、物品を売る契約を締結しても、クーリング・オフ期間内は引き渡しを拒むことができます。
まとめ
クーリング・オフできる契約は次の6種類であることを紹介しました。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 特定継続的役務提供
- 連鎖販売取引
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
商品やサービスを購入した後で、クーリング・オフできるはずだと思っていても、これらの取引のいずれにも該当しない場合は、クーリング・オフすることはできません。
そのため、クーリング・オフしたくなるかもと思った場合は、一旦立ち止まり、本当に契約していいのかよく考えることが大切です。
トラブルに巻き込まれたり、トラブルになりそうなときは、一人で悩まず、早めに信頼できる第三者や消費生活センターに相談しましょう。